so 第5回ホワイトオーチャードカップ優勝者インタビュー ~ SSDD:BLOG

4/20/2021

第5回ホワイトオーチャードカップ優勝者インタビュー


どうもこんにちは。
グウェントオフィシャルパートナーの密使REDRUMです。

春、それは出会いと別れの季節。私も前年度の豚の安寧を捨て、今年度からコラス砂漠での駐屯任務に就き、日々グレイブ・ハグに貞操を付けるような職務に当たっております。(訳:転勤先の仕事が死ぬほど忙しい)

さて、日々の仕事がどれだけ忙しくともグウェントのことを忘れたことはいっときもありません。
皆さんもご覧になりましたか?先日行われた第5回ホワイトオーチャードカップを!
わたしは「ki-ki、見た、勝った」とばかりに大興奮でお酒飲みながら観戦していました(運営手伝わなくてゴメンmomenさん…)
今回も大盛況で14名のグウェントプレイヤーが参加し開催されました。
また、引き続きCDPR様よりフォローいただき、賞品の提供を受けております。



さて第3回に続き2度目の優勝となったki-ki選手に優勝インタビューを行いましたので是非ご覧ください。

決勝戦の様子↓








REDRUM(以下、RR)「WOC第3回大会に続き2度目の優勝おめでとうございます!」







ki-ki「僥倖でした。1日経って頭が痛いです。」


RR「毎大会、神経擦り減らして戦ってらっしゃいますねw それではまず今回使用したデッキの採用理由を教えてください。」

ki-ki「まずシンジケートとニルフの採用は決まりました。次に決まったのは北方とスコイアの不採用。戦士スケリッジとモンスター3択(ヴィー、鉄壁、アラキスの群れ)の中から1つ選ぶのですがこれが難航しました。
戦士スケリッジは安定した強さでしたが後述するBO3のデッキ選択の考え方と外れているので不採用。
ヴィーと鉄壁は国内だと毒蛇の罠と《ハットリ》を使ったコントロールが辛いので不採用。
アラキスの群れはテンポが幅広く柔軟なゲーム進行ができるということ、多くのプレイヤーが採用するであろう懐柔ニルフにそこそこ強いのも評価できます。ということで3つ目のデッキはアラキスの群れに決定しました。
ここからデッキの内容についてです。

MO:アラキスの群れ

門型と通常型を試しました。門型はデッキに戻したいカードが4枚あり許容できなかったので通常型を選択。トリス:念術師の入ったデッキで4点除去を採用すると入手で高コストスペシャルを選択できる確率が下がるのですが、それを踏まえても4点除去を採用したほうがいいと判断しました。

NG:懐柔

ラーモン型とゴルサー+カンタレラ型を試しました。これは後者の方が強いと判断。


SY:巨富

シギ型とトリス+毒型を試しました。単純なカードパワーとして強いのは《シギ・ルーヴェン》ですが、ブロンズの比較だと毒が強いので結論は出ませんでした。
BANされる可能性が高いので、調整に時間をかける価値が低いとも感じました。《ホアソンジュニア》は罠、戦士スケリッジにバリューを失う可能性があるので不採用としました。」


RR「デッキ登録までの時間も限られてますし、捨てるところは捨て他の調整に充てるということですね。BO3慣れされているというのがひしひしと伝わってきます。
せっかくの機会なので前回のインタビュー時にはお聞きできなかった、【デッキ公開制BO3におけるデッキ選択の考え方】について是非お伺いしたいのですがよろしいでしょうか。」

ki-ki「わかりました、自分はこのように考えています。」

①デッキ3つをなるべく縦か横に揃える
これは意識されている方が多いと思います。大抵の場合、ハードターゲット戦略※1 を採用している相手は0~1人なので多くの場合のBAN選択が楽になります。
縦の例として、巨富と懐柔ニルフというブーストで点数を伸ばしていくデッキを採用するなら3つ目のデッキはヴィーや鉄壁ケルトゥリスがいいです。(BANは《ゲラルト:イヤーデン》など)
横の例として、セリッピーとアラキスの群れを採用するなら3つ目はエルフがいいです。(BANは《ランバート:剣士》など)
あくまでデッキパワーに差がない場合に限り、こだわりすぎないのも大切だと感じます。
※1 ハードターゲット戦略とは特定のデッキを絶対に抜けさせないようにするためのBO3、BO5の考え方。例えば、今回のサフィアさんのデッキには《ランバート:剣士》と《圧殺の罠》が採用されており、Swarmに対するハードターゲット戦略を取っていると言える。

②見せ札を1枚は採用する
これはデッキ公開制ならではの考え方です。
例として除去や初期化が一切入っていないヴィーを使用しているとします。相手は《ブラーゼンス》から《使者》、次のターンも《使者》でこちらの《バーゲスト》の支配条件が満たせず《ヴィー》を捕食することができなくなってしまいました。
こういった"強欲な"展開への抑止力として1枚だけ胞子を積んでおくと良いと思います。低コストの浄化も同様で、相手に3枚目の毒を用意するかどうかの選択を迫れます。

③除去のターゲットを決めておく
自分のデッキの除去(封印)の枚数が少ない場合、処理できるエンジン数には限りがあります。除去枚数と相手のエンジン枚数を比較できるのも公開制のポイントです。
1点エンジンは無視したり、場合によっては大物だけに狙いを定めて除去や毒を我慢したほうがいい場合もあると思います。

④R2でプッシュできるデッキの評価をわずかに上げる。"受け"のデッキの評価をわずかに下げる。
1番お伝えしたいことです。デッキ公開制では従来のラダーよりもプッシュのリスクが減ると考えています。
理由としてデッキ公開により多くの場合(サーチ系カードの連鎖がない限り)、相手が1手で出せる最大の点数を確定できます。それによってR2で点数差を逆転されないギリギリまでプッシュに成功する可能性が高まります。
例えば、戦士スケリッジは強力なアーキタイプですが、古参兵の影響もありR1を勝利するのに長けているわけではありません。
その場合、R2をプッシュされて《アイスト》+リーダーアビリティを切らされリソースを吐かされてしまうケースがラダーより増加する、というイメージです。シナリオ系のデッキも同様です。
また、1手で出せる最大の点数をずらせる複数回使用できるリーダーアビリティの評価がラダーより高まると考えています。
デッキ選択の際に考慮したい項目です。


RR「詳しい解説ありがとうございます!④に関してBO3では点数計算がしやすい、というところまでは頭で理解できていても、それが「プッシュ時の優位に繋がる」ということに結びついていませんでした・・・!やはりグウェントはかなり技術介入度が高いゲームですね。」

ki-ki「不完全情報ゲーム※2 の中では技術介入度が高い部類のゲームという認識です。」


RR「今大会で一番苦しかったマッチはどれでしょう?」

ki-ki「サフィア選手との決勝1戦目です。体感で相性差2:8くらいなので展開に恵まれました。」


RR「やはりそこですか。サフィア選手が先攻でコントロール型の熊の儀式を持ってくるとは……サフィア選手のレベルの高さを感じるデッキ選択でした。あの時点でゲームプランはどう考えていましたか?」

ki-ki「《ゲルド》《ブルーボーイ・ルゴス》《ランバート:剣士》、この3枚の被害をどう抑えるか考えていました。
《ブルーボーイ》は多少の運要素が含まれること、《ランバート》は常に致命傷、ということで自分の手順次第で被害を最小化できる《ゲルド》を特にケアしていました。(《アラキスの巣》は打たずに《自発的進化》で進行するなど)
R1を勝利してR2をプッシュするつもりで、R2の相手の使用したカード次第で撤退、という青写真を描いていました。
理想はR1勝ち、R2プッシュ、R3に偏りで勝つ(除去多めノーユニット進行or戦力値3以下を並べる)です。
R2でフルコミットは《ランバート》で返り討ちになるので極力しない方針でした。サフィアさんの構成は圧縮が多く《ランバート》にアクセスしやすい形なので。」
※アラキス絶許3人衆


RR「《ランバート》はラストセイで使われるだけで、全て摘み取られしまいますもんね。サフィアさんがR1早々に撤退して迎えた運命のR2 。どこまでプッシュするつもりだったんでしょう?」

ki-ki「元々プッシュするつもりでしたが、サフィアさんが《ゲラルト:クエン》から《ゲルド》をプレイしたので《ランバート》を持っている可能性がわずかに高まったと思いました。最後の1枚の《ヴェンガバーグのイエネファー》は出さないつもりだったのでギリギリでした。」


RR「R2、気になるプレイがありました。残り手札3枚時点でアビリティで《ドローン》を1体生成して《キメラ》をプレイし11点プレイ行いました。そこにはどのような意図があったのでしょう。」

ki-ki「選択肢は2つありました。
・《ドローン》を出して《キメラ》 自軍点数は31→43に
・《ドローン》を出さず《キメラ》 自軍点数は31→41に
自分は前者を選びました。
これはサフィアさんが次ターンに
・《アーンヴァルド》(4+6-1)+《ヘルンカドゥーツ》起動で10点
・《ヤルマール・アン・クライト》(3+6墓地に《マキシー》)+《ヘルンカドゥーツ》起動で10点
・《熊流派ウィッチャー》+《ヘルンカドゥーツ》起動で11点
の3パターンで点数を抜かされるのを防ぐためです。
自分はエリクサー症候群なので複数回のリーダーアビリティとはいえ1回使用することについてかなり消極的ですが、それでも
・逆転手が1パターンではなく3パターン(枚数的には4枚)もある。
・サフィアさんの山札は圧縮が進んで残6枚であり4枚全て山札にあるとは考えにくい
ということで《ドローン》1体出して《キメラ》を選択しました。」
※根拠に基づく《ドローン》1体生成

ここからは自分のプッシュする時の感覚の話になるので、正しくない(=勝率の下がるプレイかもしれない)可能性もさらに上がります。
自分がプッシュするか難しい局面の時に「相手のターンでこれをプレイされて点数を逆転されるのは嫌」というカードが1枚だけならプッシュを続行したほうがいい、それが2枚以上あるならプッシュを辞めた方がいい、(=パス)という基準でプレイしています。
ここが判断のスタート地点で、ここから「もし裏目を持たれていて相手に逆転されても、次の良い1手があるならプッシュ寄り」の判断に傾きます。
「嫌なカードが1枚だけ(=従来ならプッシュ有利)でも、それを持たれていたら取り返しがつかないならパス寄り」の判断に傾きます。
上記の場合ですと、
・《アーンヴァルド》《ヤルマール》《熊流派ウィッチャー》の3種類4枚をプレイされて点数を逆転されるのは嫌。
→リーダーアビリティ1回使うことで逆転されずプッシュは続行できる。プッシュ寄りの判断基準。
・《ランバート》をプレイされて点数を逆転されるのはかまわない。
・《モークヴァーグ:恐怖の心》をプレイされて点数を逆転されるのは嫌だが、1枚だけならプッシュ続行。
→手札に《トリス:念術士》(=次の良い1手)があるのでよりプッシュ寄りの判断に傾く。
以上を総合して、《ドローン》1体生成してプッシュ続行したほうがよさそう・・・という結論になります。」


RR「ふ、深い、、この思考をあのターン中に考えている……いや違いますね、常に相手の最大バリューを計算されているんですね。
やはりki-ki選手のこのプレイングを見ているとラダー上位を目指してもらいたい!と勝手ながら思ってしまいます。」

ki-ki「プロラダーで上位を目指すには月に最低300戦、現実的には400戦以上必要です。
自分は良くも悪くもGwentを長く続けてきたので、とんかつはおいしいよね。でも大盛りはいらないね。という心境です。
改めて思うのは、経験を重ねて強くなれる期間は一瞬ですね。
もしプロラダーで上位を目指すとしてもかなりLEI※3 を意識したデッキ選択とペースになると思います。」
※3 LEIとはLadder Efficiency Indexの略でどれだけ効率よくポイントを伸ばしたかの指標指標。参考ページ。


RR「そうですか、、しかしこうやってコミュニティ大会に参加してくださり、そのプレイングを見せていただけて本当にありがたいです。決勝戦は本当に感動しました。改めて優勝おめでとうございます!」

ki-ki「ありがとうございます。Gwentは枯れた技術の水平思考※4 が特に有効なゲームだと感じています。新しいカードが追加されて、環境が変化しても旧環境で培った経験や引き出しがどこかで役に立ちますね。プレイしていく中でまた新たな発見を楽しみにしています。最後になりますが、sakagamiさんには日曜日にフレンドマッチしていただきお世話になりました。また、sakagamiさんをご紹介いただいたREDRUMさんにも感謝です。
スムーズな運営に携わっていただいた、momenさん、あるくさん、aquaさんありがとうございました。
特にmomenさんの運営は抜群の安定感で、ゴールデングラブ賞を差し上げたいと思っています。おつかれさまでした。」
※4 ”枯れた技術の水平思考”とは横井軍平の哲学である。ニコニコ大百科から引用




いかがでしょうか。今回もまたki-ki選手の論理的思考力、環境理解力、経験が随所に感じられる内容になっています。そしてインタビュアーの私がなにより感じたことは、ki-ki選手の「自分の思考を言語化する力」です。
おれたちは雰囲気でグウェントをやっている」というネタがありますが、トッププレイヤーの論理的思考力には脱帽です。

Gwentは技術介入度が高いゲームだとよく言われますが、今回のWOCに限らずOpenやMastersで昔からのトッププレイヤーが活躍し続けている場面を見ると納得です。
チラッとki-ki選手がお話されてますが、実は18日のお昼にki-ki選手から連絡があり、サフィア選手のスケリッジデッキを使用してフレンドマッチをしてもらえないかというオファーがありました。
不具合で残念ながら私はお相手することができなかったのですが、ちょうどいいところに第2回WOC優勝者のsakagamiさんがいらしたので私の代わりにフレンドマッチのお願いをしたところ快諾していただき、模擬戦という運びになりました。
研究会では、ki-kiさんは数少ない勝ち筋として「《キメラ》に自発的進化を撃って勝つしかないか…」というところまで想定されており驚かされました。
ただ経験を重ねているだけでなく自分の納得がいくまで研究しあらゆる事態を想定するという姿勢にki-ki選手の強さの根源を垣間見た気がしました。

※デザインされたR3


さて、今大会も大盛況で幕を閉じました。
ki-kiさんやsakagamiさんのようなベテラン勢からサフィアさんのような比較的新規の方まで参加してくださっていることがうれしいです。
「大会に参加したことがない…」という方こそ、次回大会に参加していただきたいと思います。
デッキ公開制BO3は本当に面白い至高(思考)のルールです。ランクマッチでは味わえない緊張と興奮が得られることを確約します。

最後に、大会参加者及び視聴者、そして運営のmomenさん・あるくさん・アクアさん本当にお疲れ様でした。


大いなる太陽に栄光あれ☀


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